* シリコンV(7)たとえリーダーはいなくとも [参加者について]

Posted on June 8th, 2009 by tomoya. Filed under 思った, 行った.


魅力的な人たちに、短い期間で一気に知り合えるということは、シリコンバレーカンファレンスに参加する人にとって、かなりおいしい副作用である。

参加者・関係者は、多く見積もって50−60人くらい、日本から渡米しある程度一緒の行動をした人は30人弱くらい。
ついこの間まで、見ず知らずの同士だった人たちが、何十にもおよぶ訪問先を調整し、人の移動とレンタカーの配分の最適化という難解なパズルに挑み、アメリカに着いた後は、文字通り移動も食事もベッドも共にする(WoW)ということは、なかなかないことだと思う。

表ツアーがなかったため、今回のツアーはは非常に緩やかな結びつきのパーティだった。恐らく全員がリアルで一同に会したのは21日のカンファレンスのときのみで、それ以外は毎日違う人と行動し、たまたま同じ場所にいた人どうしでどうにかする、ということが連日起こる不思議な空間だった。どこまでが何チーム、というような明確な線引きはなく、全体の規模感もよく把握できず、判断は完全に各人に委ねられた。
<satzz online 2.0より>

と、satzzが書いているように、参加者同士はゆるやかなに結びついていた。
明確なリーダーがいたわけでもなく、明確なグループ分けがあったわけでもない。

この間、間違ったことも不幸な事故もほとんど起こらなかった。
海外旅行にはハプニングがつきものではあるけれど、今回のツアー内でぼくの知る限りで、流血事件も詐欺事件もなかったことは、すごくよかったことだ。
人によっては、一人で道を歩いて迷ったり、飛行機に乗り遅れたりもあったらしいけど、それはそれでいい経験。

ただゆるやかな結びつきであるとはいえ、集団行動を円滑に進めるには、それなりエネルギーが必要になる。人知れず、誰よりも多く仕事を引き受けた人がいたことは事実である。
毎日あらゆるところで、雑用は発生するが、そのたびに、だれにも強要されることなく積極的にこなしてくれる人が必ずいた。
この彼らの献身的な行為があったからこそ、参加者チームみんながそこそこ無事にシリコンバレーを訪問することができた。
大量に流れるメールの情報を整理してくれたり、訪問先と交渉してくれたり、疲れているにも関わらず、深夜まで宿泊代を計算してくれたり。
ぼくはレンタカーの運転を引き受けたことと、みんなのビールとスナックを買ってくることくらいしかできなかったけれど。

カンファレンス前までは、彼らとはほとんど出会ったことはなかったが、実はオンラインでの接触は頻繁にあった。
メーリングリストやFacebookで、多くの情報を交換した。
ブログやTwitterをやっている人も多く、実際に面と面を合わせなくとも、十分に互いのことを知ることができる。
シリコンバレーに関心があるのだから当たり前だろうと思うかもしれないけれど、技術やサービスが「ある」ことを知っていることと、どっぷり使い込めるようになることは違う。
こういうぼくも、SVCに参加して、アメリカではミレニアム世代とかGeneration Yとか呼ばれる人たち、もしくは日本ではハチロク世代と呼ばれる人たちと交流することで、ようやく今目の前にある新しいツールの使いこなし方をあらためて教わった。

チームの話とは少しずれるので恐縮だが、ぼくらより上の「おじさん」「おばさん」たちのネットの受容の仕方は、3段階くらいに分かれるように思う。

  1. 無関係、拒否または無視
  2. メールや調べ物など、最低限度の使用
  3. ショッピング・ゲーム・コミュニティ活動などへの積極的使用

年代・性別・職業にもよるだろうけれど、ほとんどの方が2と3の狭間くらいにいるのではないだろうか。
オンラインで買い物もするし、友人との連絡もメールやチャットなどですませる。ブログを書いてみたり、写真をアップロードしてグループで共有するなどもする。

ところで、ぼくが下の世代にふれて感じたのは、彼らは、

  1. オンラインでの活動とリアルでの活動に区別をしない。オンラインも「現実」と受け止めている

という、受容の度合がさらに深い感覚を持っているらしいこと。
自分の行動・考えのほとんどをオンラインで公開しており、積極的にオンラインでの人脈を築いていくこともできる。

そういえば、かつては、メル友なんていうメールを交換するだけの知り合いを指す言葉があったけれど、人と人とがこうしてオンラインでさかんに知り合う世界においては、メル友とリア友を区別していく必要はもはやなくなっていくだろう。

話を戻そう。
シリコンバレーカンファレンス前に、直接集まったのは1−2回だけど、オンラインでは頻繁に接触していたおかげで、実際のところ、それほど素性も知れぬ他人同士の寄合い旅行というわけではなかったということである。

集まった参加者の経歴などについて少しだけ。
2010年度のカンファレンスに参加しようと計画している人などは特に知りたいと思うだろう。
特徴をまとめると、

  1. ITに関わっている人がやはり多い。情報系の学生とか、現役エンジニアとか。だけど、それでも、5割くらい
  2. 学生と社会人の割合は、6:4くらいかな
  3. 経営・起業に関心・志向のある人が多い
  4. 圧倒的に男子が多い
  5. 意外に高学歴集団だった
  6. 英語を話せる人ばかりではない。カンファレンスをきっかけにちゃんとトレーニングをはじめる人もたくさんいた
  7. Macユーザ、iPhoneユーザがものすごく多い
  8. 居住地は首都圏・関西圏がほとんど。あと数名、名古屋の人がいた

というあたりかな。

シリコンバレー・カンファレンス自体はオープンで、お金さえ払えば(笑)、だれでも参加できるのだけれど、そんなに多種多様な人間が集まるわけではなかった。
「シリコンバレー=IT・ベンチャー企業」というイメージが定着しているからかもしれないけれど、やはりIT系の人が多い。

もっといろんな人が参加すれば面白くなるのに、と思う。
たとえば、もう何十年もブレイクスルーがない業界、たとえば建築業とか漁業・農業・林業に携わる人が、シリコンバレーの世界を見ると、どのような刺激を受けるのだろうか、ということが気になる。
IT系の人たちで普段からTechCrunchに目を通している人たちよりも、そうでない人たちにこそ参加してもらって、「キャリアとは何か」「ビジネスとは何か」「世界基準とは」みたいなことを議論できると、すばらしいのにと思う。

というのも、今シリコンバレーでは、ITオンリーのビジネスはそれほど明るくない。むしろ、話題はITを他の分野でどう活用するかということに焦点が当てられている、と感じた。
たとえば、バイオ・クリーンエネルギーなどが、さかんに注目を浴びている。
じきに、シリコンバレーはIT業界のメッカではなくなっていくだろう。新産業創出の場へと変わっていく、というのがぼくの今の予感である。

そのシリコンバレーへ訪問する日本人が、IT系ばかりではもったいなすぎる。
シリコンバレーという言葉の持つイメージを払拭して、もっともっと異色な人たちにシリコンバレーへ訪れてもらうようにしていければと思う。

最後に、ふたたびチームの話。
ぼくたちがシリコンバレーにいる間、少し南のロサンゼルスで、野球の世界一を決めるWBCの決勝戦が開催されていた。
ぼくはテレビを見る間もなくシリコンバレーを駆け回っていたので勝負の行方は知らなかったのだが、帰国後にニュース番組を見た時にはっとした。

優勝を決めた後のイチローがマイクに向かって言っていた言葉だ。

「向上心。これが集まったチームは強い。よくチームにはリーダーが必要だという安易な発想があるが、今回のチームにはまったく必要なかった。それぞれが向上心を持って、何かをやろうとする気持ちがあれば、そういう形はいらない。むしろないほうがいいと思った。僕は外からリーダーのような存在だと言われたけど、実際、中では何にもなかった。向上心があればチームはいくらでも可能性が見出せる」

いまだに、ぼくの心に強い印象を残している。
世界一をとったわけではないけれど、SVCチームもやはり、向上心のある個人の集まりだった。

彼らとのつきあいは、今でもずっと続いていて、twitterのタイムラインにあふれている。
これから、これから先がどうなっていくのか、とても楽しみである。

(写真の煙は、”高いところが好き”つながりで…。The photo is taken by linh.ngân

目次

  1. はじめに
  2. 二度目のサンディエゴの空
  3. 会社組織を覗き込んだらそこは闇だった、シリコンバレーにはなにかあると思った [SVC参加について]
  4. エンジニアですか、それ以外のなにかですか? [自己紹介について]
  5. 声をあげよ! [コミュニケーションについて]
  6. ビジネスを走らせる [起業について]
  7. たとえリーダーはいなくとも [仲間について]
  8. 風向きは変わった。さあ、どうする? [時代について]
  9. 種をまく – 消えることのないもの
  10. 旅行記

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