* シリコンV(4)エンジニアですか、それ以外のなにかですか? [自己紹介について]
Posted on June 8th, 2009 by tomoya. Filed under 思った, 行った.
シリコンバレーで初対面の人に会ったとしよう。相手は日本の事情は知らない。さて、あなたはその人になんと自己紹介するだろうか?
日本人同士の場合、あくまで例であるが、
「なにやってるの?」
「いやー、普通の会社員ですよぉ」
「どういう業界ですか?」
「製造で、浜松の方の」
「ああ、あのバイクの」
「いや、そっちじゃなくて」
という会話をやったりすること、ありますよね。
ストリッパーがじらしじらし下着を脱いでいくように、自己紹介する人。
これは二つの点ではてながつく。
はてな1.普通とか言ってしまう可笑しみ
はてな2.いたずらに会社名を伏せようとする白々しさ
はてな1の「普通の会社員」は一種の謙遜です。日本的で奥ゆかしいし、これは別段悪くないように思う。
はてな2の社名を伏せるのも、婉曲による言葉の遊びです。それに事情に詳しい人ならGuessできるような証拠を与えているわけだし。
いずれ相手に会社名が伝わるのも時間の問題だ。
それに、間接的な表現の連続は、人をより知的に見せる効果があるように思う。あるいは、恋の駆け引きのようで色めいている。
それはさておき、この会話で問題だと思われるのは、
あなたは何者かを問われているときに、所属団体名で答えようとすること
である。
当然ながら、勤務先の会社の名称だけを会話に出せば、「その会社はなにをやっているの?」という話になるだろう。
そこで、会社の話をする。
しかし、あなたは企業の経営者でない。
せいぜいWikipediaに書いてあるような事典ライクなことを話したうえで、身近な職場の「裏」事情程度しか話せないだろう。
「経営陣は大風呂敷を広げていますが、現場はてんてこまいで、へへぇ」
「うちだって、もうあれですよ」
ほとんどの場合、残業自慢、職場悪環境自慢、新人無能さ自慢など実にもったいない会話になってしまう。
未知の人に出会ったときこそ、会社の話ではなく、あなたの話をしたほうがいい。
知らない人に自分のことを開くのは気が引けるかもしれないが、無為に世間話で場を濁すよりも、よっぽど有益な時間になるだろう。
そのためのきっかけは、とても簡単だと思う。
ちゃんと自分の職種を答え、自分の職業の専門性を人に伝えること。
シリコンバレー訪問中には本当にたくさんの人に会った。
JTPAという団体による企画がメインイベントだったので、出会う人の大半は日本人であったが、もちろん英語を使って自己紹介をする場面も多くあった。
ぼくの場合は、会社員経験のすべてをエンジニアとして過ごしてきたので、「I am a software engineer.」と答えていたが、これでもまだ守備範囲が広すぎると思っている。
技術者だったり、技術に詳しい起業家だったりすると、相手によって、「web developer」とか「acoustics software engineer」とか「flash developer」だとか適宜使い分けていた。
専門分野を変えて話すのは、相手がぼくのどの側面に興味を持つだろうかと考えているからだ。
ただ言いすぎてもしかたない。
クイズを出し合えるブログパーツをサービスとして出しているMightyQuizのCOOのKellyさんと話したら、今は英語だけのサービスだけどいずれ多言語化できれば日本市場にもとても関心があると言っていた。そこで、調子に乗って「web strategist for japanese market」と自分を紹介して、「日本で展開するなら協力できるよ」とか言ったけれど、一介のエンジニアにマーケットのことがわかるはずはない。
ちゃっかり大風呂敷を広げてしまっていた。
反省。
職業観ということで思い出されるのが、シリコンバレーカンファレンスで、金島先生が壇上でおっしゃった一言。
「シリコンバレーのエンジニアは、プロのスポーツ選手のように、業界に属している感覚が強い。自分の力を発揮し高給を得るためなら、簡単にチームを移籍する」
その言葉を耳にしたときの、まさに文字通り膝をポンと叩きたくなった。
プロとは、会社の中だけじゃなくて、業界の中で活躍している人だ! 業界に属している感覚、これを忘れなければ、社外の動向にも目を配ることができるし、正しく自分をリードしていくことができる。
反対に、近視眼的に社内のことしか目に入らなくなると、社内でのローカルな知やネットワークには強くなっても外の会社ではまるで役に立たない人になってしまう。終身雇用全盛期にはそれでも良かったのかもしれないが、今はあまり危険すぎる。
どんな大きな会社で働いている人も、その会社が5年後にも存続しているだろうとのん気に仮定するのはやめて、「この会社がなくなった場合にも生き残っていけるだろうか」ときっちりシミュレートしてみるといいだろう。
そこで不安に思うのであれば、社外でも通用する技を身につける訓練を開始すればいい。
そして、改めて自分の専門性を人に伝えることができるように定義しなおせばいい。
ところで、シリコンバレーでは、おそらくだが、エンジニアと名乗るのと、そうでない職種を名乗るのとで、ずいぶん違いがある。
基本的にエンジニア優位な生態系であり、シリコンバレーに生息する人の大半の人がエンジニアおよびエンジニア経験のあるマネジメント職である。
IT業界の事情や技術のことをまるで知らずに来るということは、サーフボードを持たずにオアフ島ノースショアに来たようなもので、
「わざわざ日本から何をしにきたんだい?」
という顔をされるにちがいない。
とにかく、ノン・エンジニアの人は、シリコンバレーでは大変そうである。
まとめ:
私はなにものかということを、日本の事情を知らない人にもきちんと伝えられるような肩書きを持っておくと、話がはずみやすいよ。くれぐれも会社名・大学名だけで説明しきった気にならないように。
(写真は、ぼくの名刺デザイン)
目次
- はじめに
- 二度目のサンディエゴの空
- 会社組織を覗き込んだらそこは闇だった、シリコンバレーにはなにかあると思った [SVC参加について]
- エンジニアですか、それ以外のなにかですか? [自己紹介について]
- 声をあげよ! [コミュニケーションについて]
- ビジネスを走らせる [起業について]
- たとえリーダーはいなくとも [仲間について]
- 風向きは変わった。さあ、どうする? [時代について]
- 種をまく – 消えることのないもの
- 旅行記
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