* Tim O’Reillyのメッセージ : Work on Stuff that Matters: First Principles [全訳]

Posted on January 21st, 2009 by tomoya. Filed under 見つけた, 訳した.


原文 : http://radar.oreilly.com/2009/01/work-on-stuff-that-matters-fir.html

すばらしいメッセージです。英語で読むことにものぐさな人たちのために。


私は、昨年、多くの時間をつかって、「重要なことに取り組みなさい」と言い続けてきました。何が重要なことだろうと言う質問もたくさんもらいましたが、人それぞれ事情が異なるでしょうから、あまり積極的には答えてきませんでした。
新しい年をはじめるに当たって、考えるためのアイデアをいくつか紹介しましょう。

まずはじめに。
「重要なこと」とは、ボランティア福祉活動や、社会的大義を背負った運動、社会是正活動(do-goodlism)に限定されるわけではけしてありません。
ボランティア活動はとても重要なことですし、専門技術をもっていれば、きっと大きな貢献ができるでしょう。
しかし、そのような狭い箱から飛び出すことがさらに重要です。
つまり、営利のビジネスであっても、正しく行われているものは、社会的に意味のある価値をもたらしていると強く信じています。
むしろ、良心から集めた寄付金で運営されるばかりでなく、社会が必要とする大切な活動が持続していくための対価がきちんと支払われる経済システムを作る必要があります。

私は、半分無意識ながら、何度も、(自分のビジネスに対して)リトマス試験を行ってきました。

経験からひっぱりだしてみましょう。もっと徹底して考えられるようコメントをもらえればうれしいです。# お金よりも、あなたにとって大切なことに取り組もう

何年か前、SIMS(UC Berkley School of Infomation)卒業式でこんなテーマの話をしました。当時の私のスピーチから引用してみたいと思います。

野心的なスタートアップに勤めることになる人もいるでしょう。成功するか、失敗するかわかりません。覚えておいて欲しいのは、金銭的な成功は、ゴールの一つでしかなく、唯一の成功の尺度ではないということです。
金銭的成功は、人を夢中にさせ、おかしな陶酔に陥れます。
お金は、あなたが本当になすべきことを成すために必要な燃料だと考えてください。
それは、車を動かすためのガソリンです。なくなれば道路の脇で止まってしまうので注意する必要はあります。
が、豊かな人生とは、ガソリンスタンドで補給ばかり繰り返すことではありません。

どんなことをやるにしても、自分が何を重視しているのか、意識しておいてください。
あなたにとって価値のあることについて深く思いを巡らせることが大切です。
その時間は、あなたが起業家であれば、会社をもっとよいものにするために、あなたが会社員であれば、あなたに適した会社や団体を見つけ、そこで成果を上げられるようになるために、必ず役に立つことになります。

大きな夢を抱くことを恐れてはいけません。ビジネス書作家のJim Collinsは、優秀な会社には、”野心にあふれた大胆不適なゴール”があると言っています。「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」という、Googleのモットーはよい例でしょう。
私の経営しているオライリー社については、「イノベータたちの知識を共有させることで世界を変える」というミッションを持っています。

経営者が、本当に成し遂げるべき目標を忘れ、次の給料日のことばかり考えはじめたら、バブル期が到来したことを告げています。
猿まねした製品ばかり出すような人たちは、みんな報酬のことしか頭にないのです。
反対に、新興市場を自らの手で切り拓いてきた起業家たちは、安易に成功を期待するようなことはありません。
ヤコブが天使をとっくみあったように、(http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/gauguin/sermon/)、必ず解けると信じて、難問にとっくみあっているのです。少なくとも、解決の取っかかりをつけようとしているのです。

消費者のことや自分たちのなすべき目標ではなくて、競合相手との競争ばかりに注力するのも、おわかりのように、間違っていた方向を向いています。
“競争すればするほど、競争力を失っていく”と、Kathy Sierraは言っています

本当に成功する企業にとって、一時の成功は、壮大な真の目標を達成するための副産物にすぎません。

# 得たもの以上の価値を生み出そう

マドフ元ナスダック会長がこのルールに従わなかったことは明白です。何十億ドルもの報酬を受け取りながら経済を破壊した「ウォール街の巨人」もやはりそうです。
判断は難しいですが、ほとんどのビジネスは、社会に、顧客に、そして自分自身に実際にしっかりした価値を提供しています。
また、最も成功している企業においては、そのような貢献が、新たな価値に結びつくような価値創造のサイクルを顧客との間でうまく機能させている部分もあります。

たとえば、銀行が、小さなビジネスにお金を融資すると、そのビジネスは成長します。おかげで、さらなる資金を調達でき、預金やローンを担当する職員を雇い、さらに融資できるようになるのです。
このサイクルが、貧困から人々を救い出せると言うことを、グラミン銀行のような小規模金融が見事に実証しました。
グラミン銀行は、「得たもの以上の価値を生み出すこと」にしっかりと根を張ることができているのです。
一方で、Fannie MaeやFreddy Mac, WaMuその他この金融危機に巻き込まれ破綻した金融機関がたくさんあります。
これらの会社は、かつてはそうでなくとも、ある時点から、自分たちの利益追求にばかり関心を向けるようになってしまったのです。

この「得た以上のものを与える」ルールに懸命に取り組んでいると、ときどき、あなたのアイデアを利用してあなた以上に利益を得る人が出てくるでしょう。
が、それでいいのです。
何人もの成功者が「数冊のオライリー本からはじまった」と言ってくれました。
起業家たちは、事業のアイデアを、「私の講演や著作物から思いついた」と言ってくれました。
うれしいことではありませんか!
まだインターネットが普及して間もない頃に、Bordersのバイヤーが、私の講演の後で、「ライバル会社たちに、出版事業の計画をむざむざと教えてやったことになりませんか」と言ったのを覚えています。
私の本当の目標が、「革新的な発明家の知識を共有させることで世界を変えること」なのですから、みんなが便乗してくれて、知識共有の手伝いをしてくれるのなら、これは感激ですね。

まわりをみてください。
業務遂行にどれだけの人を雇っていますか?
どれくらいの人が、あなたの製品を使って生計を立てていますか。
どれくらいの競合相手を誕生させたでしょう?
どれくらいの人に、接してきましたか、なにも見返りを得ることはなくとも。

レ・ミゼラブル」には、ジャン・ヴァルジャン(「マドレーヌ氏」という偽名を使っています)が、実業家として善を果たすという、とてもすてきなエピソードがあります。
彼の事業と卓見によって、街はすっかり繁栄し、「少しばかりのお金しか入っていない、けちな財布もなくなった。わずかばかりの幸福しか入らないようなみすぼらしい家もなくなった」ほどになりました。

大切なのは、

マドレーヌ氏は財をなした。しかし、この実業家の特筆すべきところは、儲けばかりを念頭にしていたわけではないらしいことだ。
彼は、自分のことは後まわし、人のことばかり、よく考えているようだ。

ということです。

ちなみに、「お金儲けよりももっと大きな目標を見つめること」と「得たもの以上に価値を出すこと」は密接に関連しています。
新しく事業を始めるためには「お金儲けよりももっと大きな目標を見つめること」が必要ですし、その事業を継続するためには、「得たもの以上に価値を出す」という条件をパスしつづけなくてはいけないのです。

マイクロソフトの例を見ましょう。
マイクロソフト社は、”すべてのデスク、家庭にコンピュータを”という目標を持って創設され、何年にもわたって、それ以上の価値を生み出してきました。結果、PC産業全体の成長をもたらし、小さなソフトウェア会社が活躍するためのプラットフォームを築かれました。
しかし、年月が経つと、マイクロソフトは自分たちの作り出した以上の利益を得るようになりました。
コンピュータ本体の価格が下落し、ハードウェア企業が薄利でなんとか生き延びているところで、マイクロソフトは収益を独り占めしていたのです。
そして、OSでの圧倒的なシェアと主導権を巧みに利用して、成功している他のベンチャー事業を買収しては自社製品のラインアップに組み込むことで、新手の台頭の芽を摘んできました。

マイクロソフトは、開発者とのエコロジカルな、持続・発展可能な関係を破壊しているのです。
以前、どこかに書いたのですが、マイクロソフトは収益ではなく、もっと大きな目標にむかって舵を切り直すべきです。
そして、うまくいけば、より多くの価値を世界にもたらすように、方向転換していくべきでしょう。
(Danny Sullicanは、先週このアイデアの戦略的妥当性について、Tough Love For Microsoft Searchという、すばらしいエントリを書いています)

グーグルの例も見てみましょう。
「全世界の知を統合する」という、またしても、壮大なミッションを持っています。
初期のマイクロソフトのように、自分たちの利益のパイを広げながら、他の人たちにも多大なる可能性を与えました。
疑うなら、オンライン・ビジネスの集客の流れを見てごらんなさい。
グーグルからどれだけのトラフィックが来ていますか?
しかし、またしても、以前書いたように、グーグルの未来にも、この関門は立ちはだかってます。
グーグルは、得たもの以上の価値を貢献し続けることができるでしょうか。
それとも自分たちの利益の回収にいそしむようになるのでしょうか。

大切なのは、バランスなのです。
どんなビジネスであっても、採算が取れていなければなりません。
たしかに、誰だって、住むところは必要ですし、愛すべき家族を養っていく必要もあります。
しかし、考え方を見直してみましょう。
どれくらい自分のことをしっかりとらえていますか?
どれくらい自分の利益と自分の貢献具合について考えていますか?

特に、不景気の中で、壮大な計画に重点を置き続けるのは、大変なことです。
支払いの問題がいつもついてまわるのですから。
2001年、ドットコム・バブルがはじけた頃に、自分が下した判断について、振り返ってみると、
新しい価値をもたらすことよりも、いかにして生き残るかということばかり考えていました。
今ではとても後悔していますが、手っ取り早いお金を得るために、猿真似のような本を出したこともあります。
しかし、わが社の収支に本当によい影響をもたらしたのは、未来を信じて、全力で未来に立ち向かったことでした。
Web2.0カンファレンスは、意気消沈したIT業界をもう一度盛り上げていきたいという意志、インターネット世界の新たなルールを多くの人に知ってもらうという意志によって、突き動かされていたのです。
Safari Books Onlineは、自社だけではなくてすべての出版業界のための収益構造を作り上げたいという意志の結晶です。
Make:は、次世代のハッカーたちへの賛辞ですし、FooCampは、わが社の成功に貢献してくれた人たちになにかお返しをしたいというところからはじまりました。

この2つのルールだけではまだ十分ではありません。
もっと長期的でエコロジー的な視点が必要だからです。
そこで、3点目をあげましょう。

3. 長期的な展望を持とう

ブライアン・イーノが、The Long Now Foundationを作るためのアイデアを得るきっかけとなった経験をこう話しています。

1978年だった。僕はNewYorkに来たばかりだった。お金持ちの知り合いがホームパーティーに招待してくれたので、タクシーで向かった。近づくにつれ、穴ぼこだらけでぼろぼろの道になっていくので、運転手は本当に場所をわかっているのかと不安に思った。
彼は、陰鬱なオフィスビルの前で車を止めた。ワイノ(アルコール中毒者)が二人も階段でくたばっていたような気がする。他に、人の気配はまるでなかった。

僕は思い切って運転手に聞いた。
「場所を間違えたんじゃないか?」

が、そうではなかった。ベルを鳴らすと、「最上階へ来て」という友人の声がしたのだ。
彼女のユーモア・センスは前から知っていたので、
「まったく。ジョークか、なにかなんだろう」
おかしさに笑い出しそうだった。

エレベータが、ぎしぎしがちゃがちゃと音を立てて、ゆっくりと昇った。
最上階に出てみると、そこは何百万ドル級の豪邸であった。
こんなに、まわりの風景とのギャップのある建物は他にあり得ないだろう。

こんなみすぼらしい場所に、こんな豪邸を建てたがる人がいるなんて、僕はまるで理解できなかった。
後で、彼女と話してみると。
「この家、気に入ってる?」
「ええ、本当に最高の場所」
「あの、つまり、この近隣のことなんだけど、気にならない?」
「ああ、この地区のことね?だって、家の外じゃない!」
彼女は、笑った。

何年も前はじめてこの話を聞いたとき、イーノは、友人の邸宅について、たくさんのことを語っていました。
彼女が作り上げた<狭いここ>と、アルコール中毒者やホームレスがあふれる外の世界<広いここ>という話になり、
そして、この体験をきっかけに、イーノは、the Long Nowというコンセプトにたどり着いたのです。

部分的な最適解を求めることは楽なことです。しかし、すぐにしっぺ返しを食らうでしょう。
経済は、ねずみ講ととてもよく似ているところがたくさんあります。
私たちは、他の国からお金を借りてまで、消費に投資しています。
私たちは、子供たちの未来を肩代わりにしてまで、再生不能な資源を枯渇させようとしています。

恵まれた状況の中で暮らしていると、<狭いここ>や<短い今>より向こうへと目を向けることが、なかなかできません。
だから、本当に私の社会にとって大切なことはいつも(人々の無関心となり)利益のあげることのできないままでいるのです。

だから、現在のように、バブルがはじけたときこそ、現在のことばかりでなく、持続可能な世界の持続可能な経済をつくりあげるために、理想的な社会の絵を描くことがどんなに大切かを話し合うのに、もっともよい時期なのです。



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